ウォーターマン カレン



 カレンを手にしてから15日あまりになる。少しずつ使い方が分かってきた。
 まず、キャップを尻軸に付ける時のこと。他の万年筆は、軽く差し込むだけで確り固定されるが、この万年筆、カレン ブラックシー STは、予想以上に力を入れてクイっと差し込まなければ、文章を書いているうちに外れてしまう。

 カレンには、最近出された「コンテンポラリーブラックST」や、従来からある他のタイプの外装のものがある。それらは軽く差し込むだけで確り固定されるのかもしれないが、実際には試したことがないので分からない。
 この点は、ペリカンやモンブランのように軽く差し込むだけでまるで吸い付くように固定されて外れないのとは、随分勝手が違う。ボディにキャップの差し込み傷が付くのを嫌う私には違和感があった。
 しかし、不便なことには代えられないので、思い切って通常より深く差し込むつもりで力を入れてみると、ある点でぴたっと止まり、そこまで差し込むとキャップは外れない。セルロイドやエボナイトのような吸湿性のある柔らかな素材とブラスの上にラッカーを塗った素材との違いだと思うが、あるいはこれも個体差があるのかもしれない。
 ともあれ、コツが分かればキャップが外れる心配はない。今のところキャップの差し込み傷も付いていない。

 次にインク。ペン先を見て、ハート穴がないのに、しかもペン芯も見えないのに、どうしてインクが送り出されるのか不思議だったが、極めて順調に、ほど良くインクが紙に乗る。
 最初は、自分でブレンドしたオリジナルインクを入れて使っていたが、細字のペン先にはウォーターマン独特のブルーブラックが似合うと思って、カートリッジに代えた。
     (右の見本は、紙のテーブルナプキンに
               インクを吸わせたもの)

 日本で手に入る殆どのメーカーのブルーブラックを試したが、結局落ち着いたのは4色だ。粒子が最も小さくて書いた時の色と1年後の色が変わらないペリカンのブルーブラックと墨色に近いシェーファーのインクと、ブルーブラックと思えないほど鮮やかでターコイズっぽい色のウォーターマンのブルーブラック、それにブレンドした自分のインクだ。
 太い線にはオリジナルを入れて、細い線には、万年筆に応じて既製のインクを入れている。カレンにはそのメーカーのブルーブラックが似合う上、インクフローも最も安定している。

 最後にペン先の角度。海外メーカーの万年筆の殆どがそうであるように、ペンポイントが通常はペン軸の上部に沿って、やや中心より上にあるのだが、カレンはそれが鉛筆の芯のように軸の真ん中にある。この角度の差は、日本語を書くのに大きな影響を及ぼす。英文を書くのには、羽根ペンのようにペンポイントが上にあるほうが書きやすい。
 しかし、漢字を書くのには、和筆の穂先のように中心にあるのが良い。海外メーカーの万年筆で、ペンポイントが中心近くにあるものを求めるなら、かなり大型のものでなければならない。ペン軸が太いと、握った時に自ずとペンポイントが中心寄りになる。
 私が、大型の万年筆を好む理由もそこにある。それでも、最初に買ったモンブラン149は、購入時にペンポイントを1㎜ほど中心に寄せて貰った。それで随分書き味が変わった。カレンは最初からペンポイントが中心にある。鉛筆やボールペンのように完全に中心にあるわけではないが、限りなくそれに近い感覚で筆記できる。
    【PENS ウォーターマン カレン ブラックシー STの記事にリンク】

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