Meisterstück 149 14c 

 初めて購入したマイスターシュテュック。それ以前にジェネレーションを数本持っていた
が、149 を自分で買えるようになって早速行動に移した。購入したのは京都丸善。初めて手
にして、ノートに書いてみると、その書き味にまるで作家にでもなったような気分だった。

 数年前、雑誌で読んだ記事に、開高健が「万年筆は自分の指と化すまで云々」というのが
あって、その記事に載っていたのが、私の持っている14金ペン先の万年筆だと知った。

 先日、モンブランブティックに用件があって行ってみると、たまたまモンブラン万年筆だ
けを調整するという人がおられて(雑誌にその人の名前が載っていたが失念した)、私のこ
の万年筆は、モンブランが限られた期間にだけ出したもので非常に珍しいものをお持ちです
ねと言われた。

 開高健が使っていたことから、開高健モデルとか呼ばれているらしいが、その調整師曰く、「たまたま開高健さんが使っていただけで、モンブランが彼のために作ったものではありま
せん」、だから、「開高健モデルと呼ぶのはどうか...」ということだった。

 この万年筆はペン先を2度修理に出している。1度目はどうもペン先が浮くような書き味
感がしたので、1ミリだけ中心に寄せてもらった。それでまるで違う書き味になり、日本語
が日本語らしく書けるようになった。2度目は、このペンを真っ逆さまに落として、ペン先
が90度曲がってしまった時だ。二度と元に戻ることはあるまいとショックを長い時間抱え
て、すがる思いで、京都丸善に修理を頼んだ。出来上がりは、直角に曲がっていたことなど
微塵にも分からない完璧な修理だった。1ミリ中心に向けてペン先を真ん中に寄せる作業も
してもらっていた。この2度の調整と修理は全て無料だった。
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