Pelikan Souverän M1000 緑縞

     - 緑縞というボディ -

 先に「ペリカン スーベレーン M1000」については、記事にしている。しかし、私が
購入したのは、実は、この緑縞の方が先だ。

 まだ、神戸のナガサワ文具店が新しい店舗になる前のこと、既にファーバーカステル
のペルナンブコを購入していたので、ナガサワ文具店とは、馴染みになっていた。12
月も押し迫った頃、招待状が届き、店に行ってみた。いつものとおり、何を買うともな
く。そこで、目に留まったのが、このスーベレーンの緑縞だった。
 サイズは、

 ■  長さ:約147mm(収納時)/約177mm(筆記時)
 ■  軸径最大:約14mmφ
 ■  キャップ径最大:約16mmφ
 ■  重さ:約33g

 と、かなり大型の万年筆だ。

 私が気に入って購入した訳は、この万年筆に限っては、ボディの色柄だ。緑縞には、
特別の想いがあった。学生時代から使っていたペリカン緑縞の万年筆を心ない人に持っ
て行かれてから、その想いは心の中に澱のように残っていた。この万年筆と出逢った
時、その鬱憤が少しは晴れるような気がした。早速、試し書きをさせて貰うと、スラ
スラと書ける。大型の万年筆だと思わせない筆記感は、筆圧が強くないどちらかとい
うと撫でるように書く私の書き癖のせいだと
思う。

     - 万年筆とインクと紙 -

 ペリカン・スーベレーンM1000と言えば、そのペン先の柔らかさが定評だ。フワフワ
などと評される。実際、私の持っているもう一本のM1000はそのとおりだ。しかし、こ
の個体は違う。高価な万年筆ほど、個体差が大きい。黒以外の色であれば、ボディの色
合いさえ違うこともある。ペン先の個体差はあって当たり前だと想う。この緑縞は、も
う一本のM1000に比べるとやや硬いと言わざる得ない。それ故に、もう一本の黒ボディ
の方を手に入れてからは、この緑縞の使用頻度は極端に下がった。同じペンケースに入
れながら、触手はついつい柔らか、フワフワの方に伸びていた。しかし、あるインクと
出逢ったからは、事情は変わった。

 インクフローは、ペン先の18金・14金・スチールとかニブの構造だけで決まる訳では
ない。同じ18金や14金でも、いや、スチールでさえも、少しの形の違いや、金属の厚さ
薄さによっても、ペン先の柔らかさとインクフローに違いが出る。調整によって、イン
クフローは変えられるが、柔らかさとの兼ね合いが難しい。

 同じインクを入れるとインクフローが潤沢だとか、控えめだとかの判断ができるが、
異なるインクを入れると、インクの出方も変わる。話が広がりすぎてしまうが、もちろ
ん、書く紙によっても、滲み具合に差があるので、ペン先とインクの質と色、それに紙
の4つの要素の組合せは優に百万通りを超える。
 その中で、自分の好みや用途を考えて、万年筆と紙やノートの組会わせを探すのは、
一生を費やす価値のある旅のようなものだと思う。

     - パイロット 色彩雫(いろしずく) -

 私は基本的には、万年筆のインクはブルーブラックかブラックと決めている。
 メーカーによって、この2色も様々な色合いがある。20社以上のブルーブラックを
試したが、気に入っていたメーカーが色合いを変えたので、今は、自分でブレンドした
ブルーブラックを使っている。

 インクの特性として、その粘性がある。粘性の高いものは、当然インクフローも控え
気味になる。粘性の低いサラサラとしたインクだと反対にインクが良く出る。
 海外のメーカーは、インク粒子の細かさに差があるので、褪色した時に本領がわかる。
書いた時の色と1年後の色が違うことが多い。インク探しもまた、旅だと言えよう。

 パイロットの色彩雫というインクシリーズが最近、売り出された。最初は3色だけの
発売だったが最近は20色にも及ぼうという勢いで種類が増えた。その中で、最近発売
された「松露」という落ち着いた深緑色のインクが気に入った。

 偶然にも、ペリカンの緑縞の緑とよく似ていて、これを入れたとき、万年筆から繰り
出される文字の色と万年筆がよく合う。粘性が低いので、インクが潤沢に出る。この上
ない組合せだと思うと、長い間、休んでいたペリカン・スーベレーンM1000緑縞の出番
が俄然増えた。
  万年筆とは面白いものだ。

   秋深き隣は何をする人ぞ
                   芭蕉のこの句も感慨深い。

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