OMAS EXTRA 555

 何年か前から数年間に渡って、オマス社の万年筆は、日本では手に入らなくなった。 詳しい事情は知らない。突然、店頭から姿を消し、通販各社もオマスのページを閉じた。幸いな ことに1年ほど前から日本での販売を再開した。オマスファンの私にとっては、嬉しいことだ。
 ただ、これと思った物は、かなり値が張るようになった。本社のあるイタリアでは従来とあまり 変わらないということだが...。

     ネットで落札した万年筆
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 ともあれ、日本ではもう手に入らないと思っていた私は海外のネット通販か、イタリア本国で買うしかないと思い込んでいた。実際、イタリアの万年筆店で一本購入した。 この"EXTRA 555"は、常々見ている万年筆のネットオークションに出品されたデッドストック品だった。新品とはいえ、1990年代の初めに売り出されたものだったので、保管状態に多少の不安はあったものの競り落とすつもりで入札を繰り返し落札した。

 通常、試し書きもせずに高価な万年筆を購入することはないが、この万年筆は、昔ながらのエボナイトのペン芯でペン先を丸ごと引き抜いて調整できるとのことだったので、手に入って不都合があれば調整すれば良いと思ってのことだった。

 手許に届いた時、外見上は何の問題も無かった。擦れ傷や色褪せもなく新品そのものだった。箱も当時のオマスの箱に入ってきた。しかし、ペン先が少し出過ぎていると思ったので、自分好みにするため、ペン先を引っこ抜いて、深く差し込み直した。深く差し込んだためにペン先が手元に1.5㎜ほど近づいて、ペン軸の細さにちょうど良い位置とバランスになった。

     往年の技術に対する愛おしさ

 書き心地は上々だ。18金の柔らかさもほど良く、なめらかな滑りとインクフローも申し分ない。同じオマスでもパラゴンやアルテイタリアーノとは違う書き味を楽しませてくれる。

 ピストンフィラーの機構も確り作られていて、上の写真、8枚目と9枚目に載せた尻軸を収めると、継ぎ目は全く分からない。

 サイズは、収納時:約130㎜、筆記時:約160㎜、軸径約12㎜

 全て自分で計ったので、正式な仕様書とは若干異なるかもしれない。軸の細い中型万年筆という独特のフォルムだ。ボディの重さは量っていないが、非常に軽くふわっと握る細い毛筆の感がある。

 ちなみに、この"EXTRA 555"は、発売開始後に同型透明のデモンストレーターを出している。蒐集家の中には、デモンストレーターにはインクを入れないという人もいる。それほど、希少価値の高い貴重な万年筆と言える。

 私は、自分でブレンドした淡いブルーブラックのインクを入れて、書き心地を楽しんでいる。