Reform 1745 ~ German Student Piston Filler

     - 万年筆と色合い -

 ブリティッシュグリーンというカラーネームはないそうだ。ペリカンの緑縞もアメリカ・シェーファーの昔の万年筆も同じようにグリーンを基調として万年筆を売り出している。なぜグリーンなのか、少し調べてみた。調べながら、「そう言えば・・・」と思い当たった。私が思い浮かべるイギリスのジャガー車は、グリーンだ。同じようにジャガーと言えばグリーンと思う人も少なくないと思う。

 調べた結論は、モータースポーツの世界で、1900年にフォーミュラ-・ワン(F1)に参加したチーム(当時は数が少なかった)にチームカラー(当時はチームカラー=国の色)が割り当てられたらしい。イギリスから参戦していたジャガーチームに割り当てられたのがグリーンだった。当時のフォーミュラ-カーの写真を見てみると、確かにグリーンだ。どうやら、ブリティッシュグリーンという言葉は、ここに由来があるらしい。

 万年筆が発明された頃、ペン軸は黒のエボナイトしかなかった。万年筆が黒以外の色を持つようになったのは、象牙の代わりにと発明されたセルロイドが世の中に登場してからだ。楠から採れる樟脳とセルロースからできるセルロイドの発明で、万年筆は様々な色を持つようになった。そのセルロイド万年筆の中で最も人気を得たのが、今でも多くのファンのために生産されている「ジェードグリーン」という色柄だった。

 ジェードグリーンが一世を風靡した時代がある。どうも、万年筆とグリーンという色は、絆が深いようだ。私がこの万年筆を手に入れた理由も然り。なんとも言えない落ち着いたグリーンが私の目に留まったのだ。

- リフォーム製万年筆 -

 リフォーム社は、1928年にドイツで生まれたメーカーだが、今はもうない。戦後、ペリカンやモンブランに押されて会社をたたんだしまったのだが、何とも惜しい。日本では、フジコロナという代理店が販売していた。

 上のスライドショーの最後の写真は、いくつか資料として残っているカタログの一つで、私が気に入っているものだ。
 オフィスにいる女性の写真の下には、次のような宣伝の記載がある。

  活動的なビジネスマンの
  忙しい毎日
  電話の応対、スケジュールの打合せ
  会議、商談、契約、レポートの作成・・・・・・
  万年筆はかたときもはなせません
  そんなとき リフォームのスムーズな
  書き味は あなたに安らぎと
  自信をあたえてくれます。

  

 万年筆をあくまで小道具として紹介している。しかし、その小道具を持つことで、何か仕事がうまく運びそうな、安らぎを与えてくれそうな感覚を注ぎ込んで、控え目にしっかり主張している。
 数行のストレートな表現だが、それが却って奇を衒わないレトロな言葉で小気味よい。

     - リフォーム 1745 -

 さて、肝心な万年筆だが、昔のドイツ職人が何を作るにも妥協しない職人の意気で作っただけあって、完成度は非常に高い。
 ペン先はスチールだが、程良く撓り、長時間の筆記に耐える。別のカタログ(ブログ記事)にも書かれているが、学生や教授が普段使いに大量に文字を綴ることを念頭に置いて製作したものらしい。学生に勧めるだけあって極めて廉価だ。さしずめ、今日のシャープペンシルくらいの感覚か。
 しかし、ピストン吸入式の機構には一分の隙もなく確りしていて申し分がない。ネットで見ていると、海外での評価も高い。強いて言えば、クリップ部分のメッキがさすがに安っぽい。この値段ならとは思うが・・・。

 私は、この万年筆を2本購入した。一本は当時のままにして、もう一本は、メッキを剥がして自然な金色にし、自分ブレンドのインクを入れて普段使いの実用に使っている。細くて小さめのこの万年筆は、胸ポケットに入れて邪魔にならないので、手帳にメモ書きするのに打って付けだ。作られた年代とメーカーが無くなった点で、アンティークのカテゴリに入れたが、現代でも出色の逸品だと言える。

  【サイズ等】

  ■  ペン先 : イリジュームポイント スチールニブ
  ■  サイズ : 中細程度
  ■  機構 : ピストンフィラー式
  ■  長さ : 130mm
  ■  太さ : 10mm キャップ 11.5mm  
  ■  重さ : 10g

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コメント(2)

最近、某ショップでリフォームを購入しました。さすがに手堅いつくりで、普段使いのペンとして重宝していますが、この[1745]は、いったいいつ頃販売されていた商品なのでしょうか。ご教授いただければさいわいです。

返事が遅くなって申し訳ありません。
正確なところは分かりませんが、ドイツで発売されたのは、
1950年代の後半だと思います。日本でも時を置かず発売
されていたものです。


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