Starwalker Resin

     モンブラン スターウォーカー

 モンブランがこのシリーズを世に出したのは、そのフォルムから分かるように比較的最近のことだ。と言っても、2003年の発売だから、もうすぐ10年近く前ということになる。
 いつものように京都丸善の万年筆売場をぶらぶらと見に行くと、この極めて現代的な形をした一本が目に留まった。最初は、これがモンブランだとは思わなかったが、マイスターシュテュックと並んで置かれていたので興味を引かれて、ショーケースから出してもらった。

 まず驚いたのはキャップの透明ドームだ。真上から見ると、トレードマークのホワイトスターがはっきりと浮かび上がる。横から見ると、ドームの中に0.1㎜ 程度の線しか見えない。筆記時には見えて、ペンを置くと隠れる。その発想と技術に感心させられた。すぐ後で、この仕掛けは、ディズニーランドあたりで、子ども向けのお土産にありそうだなと思ったが、私は既にその精緻な出来栄えに魅了されていた。伝統を重んじるモンブランが随分思い切ったタイプを作ったものだという感慨もあって、その場で早速試し書きをさせてもらった。細字に黒のインクでの試し書きだった。
 スラスラと専用紙の上をペン先が走る。綺麗な線が書ける。この時点で私は買い求めようと心が傾いていた。いつもは、文字を書くのだが、何故かこの万年筆は、縦と横の線を書きたくさせる。何本も縦線を書いていると、いつもの店員さんが、こう説明してくれた。
「この万年筆は、どのような気温や気圧下でもインクフローが一定でスムーズで滑らかに書けることがウリらしいです。」
 それでスターウォカーという名前なのかと何故か分かったような気がした。その「分かったような気」が、私の買う気を後押しした。分かりやすい客だ。

     - コンバーターを探して -

 最初は付属のカートリッジで黒の文字を書いていたが、使う機会が多くなるほどに自分好みのインクも入れてみたくなった。スターウォーカーは本来カートリッジ専用の万年筆だが、そこは放縦な性格が妥協させなかった。高島屋ならと思い、万年筆売場で無理を言ってみた。
 高島屋の店員さんは、「コンバーターにも色々ありますから」と言って、快く有りっ丈のコンバーターを出して並べて、合う物を探してくださった。何本も差し込んでは試して、とうとう一本のコンバーターを見つけていただいた。
 今もそのコンバーターに、その時々に変わる好みのインクを入れて使っている。

     - これで原稿を書くと -

 原稿を書くのにペン先の調子を気にしなくて書きたい時がある。私にとって、この万年筆の最良の長所は、気にしなくて良いところだ。ペン先は少し硬めなので、力を入れて紙に押しつけても傷める不安が全くない。それでいて、力を抜いても確りインクを出してくれる。
 気が置けない万年筆なのだ。キャップを尻軸に付けるのも、尻軸に切られた2条のネジにキャップを二回しすると、ぴったりとペン先と一直線にクリップが来る。どうやら、「確実」というのが、この万年筆のコンセプトらしい。不確かだが、この万年筆が売り出される直前に、世界で3連リングの指輪だか何だかが流行っていて、世の女性の憧れの的になったことがある。尻軸のキャップ差し込み用ネジ切りトリムが3連になっているのは、このせいのような気がする。
 使うほどに、ペン先を自分好みにしたくて、一度調整してもらった。細字からやや中字に近づいたが、スラスラからヌラヌラに変わって、書き心地にも満足している。

     - 多様なモデルに -

 私が購入した時は、このブラックレジンにプラチナコーティングしかなかったが、今では多様なモデルがある。中でも2006年にモンブラン100周年を記念して販売されたキャップのドームにダイヤモンドのホワイトスターを入れたモデルは今でも人気が高い。宝石で飾り立てた高価な万年筆に興味はないが、スターウォカーのダイヤモンドモデルは、いつか、他に欲しい万年筆がなくなれば・・・と思っている。しかし、果たしてそんな時が来るかどうか。

  【サイズ等】

  ■ ペン先:14K ゴールド ロジウム仕上げ
  ■ 文字幅:F
  ■ 長さ:約140mm(収納時) / 約150mm(筆記時)
  ■ キャップ径:約14.2mmφ 軸径:約12mmφ 重さ:約22g