Montegrappa NeroUno

    - ネロウーノ 細字 -

 モンテグラッパの新しいデザイン、ネロウーノと初めて出逢ったのは、これが発売された当時だった。2007年のことだ。
 JR京都伊勢丹の万年筆売場のショーウィンドウの中で、そのデザインが私の目を引いた。モンテグラッパというメーカーは知っていた。イタリアの万年筆は、それがイタリア万年筆らしいところなのだろうが、デザインに奇を衒うことが少なくない。奇を衒うというのは良い表現ではないが、斬新というのは褒めすぎるかとも思う。芸術的というのが一番無難な表現か。それが良いと思う人には、この上ない魅力なのだろうが、私はそうではない。イタリアの万年筆は何本か所有しているが、どちらかというと控えめなデザインが殆どだ。

 オーソドックスで厭きのこないものが良い。これは、万年筆以外でも、身の回りの品を求める時の私の習性だ。スーツはこのブランド、靴はこのブランド、時計はこのブランドというふうに何十年も同じものばかりを身につけている。しかし、これは習性であって確固たる信念や主義といったものではない。だから、時々揺らぐ。揺らいでは後悔することもある。
 ネロウーノを初めて見たときは違った。試し書きをさせてもらうと、ペン先の柔らかな感触とバランス、軸の太さなど申し分なかった。しかし、その当時は字幅が中字の万年筆にしか興味がなかったので、伊勢丹にあった細字を購うことはなかった。最近はやたら手帳にスケジュールやメモを書くことが多くなったので、細字万年筆を求めることが増えて何本かを手に入れたが、細字万年筆も使ってみると、なかなか味わい深いことがわかった。

 もう一本細字万年筆をと思って、京都伊勢丹を訪れた。シェーファーやカレンの細字はすでに同じ売場で購入していたので、色違いで、どちらかを探すつもりで行ったのだが、一本一本書き味が違うので迷っていたところ、店員さんが、以前にネロウーノを試し書きしていて、これが中字だったらなぁと言っていたことを思い出してくれて、「これは確か試し書きをしていただいたものです」と言って、ネロウーノを奥から出してきてくれた。メーカーには返されていなかったのだった。
 私はすっかり忘れていたし、ショーケースにもなかったので、思いがけないことだった。初めてネロウーノを手にした時のことを思い出して、この万年筆をいただいた。

    - モンテグラッパ -

 モンテグラッパは、イタリアのバッサーノ・デル・グラッパという蒸留酒が特産の地で、1912年に設立された万年筆メーカーだ。この地は、銀工芸品の精密さでも有名だ。私はネロウーノより前に銀無垢のモンテグラッパを持っていた。グラッパとは、この地の蒸留酒の名前である。私はグラッパの入った精巧に細工されたボトルを部屋に飾っている。中身は飲んでしまったが。バッサーノ・デル・グラッパの職人の腕のほどは、これらの工芸品から十分に伺える。

 万年筆も細部にわたって精巧に作られている。装飾部分はもちろんのこと、内側のネジなども寸分の弛みや違いもなく心地よくぴたりと締まる。
 ペン先はあっさりしたブランドロゴが刻印されているだけだが、それが却って金属部分の精緻さを強調してるように思える。その分、温もりは感じられないが、反対に清涼感がある。インクの色を工夫することで、ボディとのバランスが生み出されるので、今は、グリーンの暖色系のインクを入れて使っている。
 他の細字万年筆のインクの色と組み合わせれば、スケジュールのカテゴリーや内容によって使い分けられるので楽しい。

【ペン先・機構等】

  ■ ペン先 : 18金 文字幅 F
  ■ サイズ : 長さ:約144mm(収納時)最大胴軸径:約14mmφ(クリップを除く)
  ■ 重さ : 約29g
  ■ 機構 : カートリッジ/コンバーター両用式
  ■ 仕様 : 胴軸 / キャップ
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