Parker Frontier

    - 隅には置けない万年筆 「フロンティア」 -

 パーカー・フロンティアは、若者向けに低価格で売り出された万年筆だ。ステンレスのペン先だが、もともとペン先硬めのモデルが多いパーカーのことなので、18金と大差はないと割り切れば、後は形状とバランスの問題だ。その点、私は申し分のない万年筆だと思っている。

 まず、形が良い。いかにも万年筆らしい形をしている。キャップを閉じた時のキャップと胴軸の長さの比率が美しい。万年筆はキャップを閉じている時の方がはるかに時間が長い。当然、目にするのも閉じている時だ。机の上に置いていて厭きない。

 私は、フロンティアを購入するなら、ステンレスキャップと黒軸のツートーンだと思っている。ボディがステンレスで、キャップを閉じてもこの美しい比率を楽しめないオールステンレスのモデルも販売されているが、それは、別の用途で、あくまで実用として筆記のみを考える人のためにあるものだと勝手に決め込んでいる。楽しむならツートーンだ。

 次に、筆記時のバランスだ。軸の太さと長さがキャップの差し込み加減も加えて、実に上手く設計されている。キャップを尻軸に差し込んだ時、ペンのどこを握ってもバランスの良さを感じる。中央の方に指を添えて、やや大きめの文字を書く時も、ペン先に近い所を持ってやや小さめの文字を書く時も、バランスに何の違和感もない。たいていの万年筆は、バランスの点から書き手の好みで握る位置が知らず知らずに決まってくる。だが、このフロンティアは好きな所を持たせてくれる。

 三つ目に、この万年筆の良さをあげると、筆記に気を遣わないことだ。値段の安さもあってか、極端に言えば、転がって潰れてもまた買えば良いさと思える。ペン先が硬いので、何か気に食わないことがあってゴシゴシとその想いをしたためたい時など、この万年筆は強い味方になってくれる。

    - 消えつつあること -

 最近、残念なことに、フロンティアを万年筆店の店頭で見かけることがなくなった。私がこれより前に手にしたパーカー45は、今はもう製造されていない。安価で性能の良い万年筆が市場からどんどん消えて行く。

 これはパーカー社に限ったことではない。ラミーのサファリとペリカンのペリカーノ・ジュニアを除いて、殆どの万年筆メーカーに言えることではないだろうか。日本のメーカーは頑張っていると思う。世の中の趨勢とはいえ悲しいことだ。

 このフロンティアも私が何本か持っている(正確にはどこかで失ったものもあるので、持っていた)ものと比べるとマイナーチェンジをしている。ペン先の模様が一番顕著な違いだ。
 昔のフロンティアは曲線模様が切り割りを跨いで刻印されていたが、最近のものは、機械的な斜線であっさりしている。
 どちらが良いか、それは全く好みの問題だが、選べなくなったのは少し寂しい。
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    - ウォッシャブル・ブルーというインク -

 私が万年筆に入れるインクは、殆どがブルーブラックで、数本には黒のインクを入れている。鮮やかなロイヤルブルーを使うことはめったにない。しかし、鮮やかなブルーのインクを使いたいと思う時がある。モンブランやペリカンのロイヤルブルーを試したこともあるが、鮮やか過ぎて、後で読むのが嫌になる。ペン先が極細のものだと綺麗に見えるが、普通の太さで鮮やかなブルーが書きたくなる。
 そんな私が辿り着いたのがパーカーのウォッシャブル・ブルーだ。鮮やかなブルーだが、ロイヤルブルーのような光沢がない。主張しすぎない鮮やかさなのだ。

 インク探しも一つの楽しみだが、それぞれのメーカーがブルーと名乗って微妙に色合いの違うインクを出している。ブルーブラックともなると、千差万別と言える。
 ともあれ、私にとって、目下のブルーインクは、パーカーのウォッシャブル・ブルーだ。 frontier10.jpg

















■ ペン先 : ステンレス 文字幅:F
■ サイズ : 長さ : 約133mm(収納時) / 約147mm(筆記時)
■ 軸 径 : 12.7mmφ 
■ 重 さ : 15g 
■ 機 構 : カートリッジ/コンバーター 両用式 キャップタイプ

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