Pelikan Souverän M101N Lizard

    - リザード柄に -

 2年前、ペリカンM101Nトータスシェルブラウンが発売された。そして今年は、その姉妹品のようなリザードが、ペリカン社創設175周年を記念してという名目で1月に発売を開始した。私は昨年12月に一足早く手に入れた。トータスシェルブラウンの作りが気に入っていたから、同じ拵えのリザードにも期待をして発売予告と同時に何とか早く手に入れたいと思っていたのだ。

 トータスシェルブラウンも一本一本ボディの模様が違ったが、もともと色が混じり合った柄なので、さほど違いが気にならなかった。しかし、リザードはボディ全体がモノトーンなので模様の違いが気になる。何本か手に取ってみたが、数本の縞模様がくっきりと入っているものがあり、それは遠慮したいと思った。

 ペン先は予想通り、トータスシェルブラウンと同じ作りでこちらはロジウムコートされている。クリップやキャップのリングなどのトリムもシルバーカラーで統一されて、全体をあくまでモノトーンに徹したのが今回のコンセプトらしい。私の好みだ。
 恐らくトータスシェルブラウンと同じ型を使ってペン先を作ったのだろうから、撓り加減の柔らかさと紙面に当たった時の感触がとても良い。筆圧の高い人には不向きな柔らかさだと思う。

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    - 確かな拵え -

 このシリーズで何より気に入っているのは、その軽さだ。ほぼ同じ大きさのペリカン・スーベレーンM600が約17グラムで、リザードは15グラムと非常に軽い。ボディが軽いとペン先の滑らかさが重要になる。筆記時に少しでも引っかかりやざらつきがあるとそれが具にボディから手に伝わって極めて不快になる。リザードは何本か試したが、どれもとてもスムーズにペン先が紙の上を走る。インクフローもちょうど良い。出過ぎず、控えめでもない。書き手の筆圧を感じてインクを出しているような正確さを感じる。特に今回購ったEFの細さであるとその感触は顕著だ。これはパイロットのファルカンと共通した特質だ。使用する場面にもよるが、私は気に入っている。

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    - たかがメモ、されどメモに -

 書き味が良くて、ボディが派手過ぎずに気に入っているなら、使い道は一つ、普段使いだ。普段使いにするには少し贅沢な万年筆だが、胸ポケットに収めておくと、気分までよくなる。そう思えば、贅沢も良しと言える。
 アシュフォードのジョッターと対にして使っている。たかがメモ、されどメモというのが私の困ったメタフィジックスだ。
  <次の石川桂郎の句は、左がトータスシェルブラウンF(ペリカン・ブルーブラック
  インク)、右がリザードEF(自分のオリジナルブレンドインク)で書いてみたもの。>

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    - ペリカン社の気遣い -

 トータスシェルブラウンとの違いは、本体だけではない。ペリカン社の説明にも態々書かれているように、リザード柄のケースに入っている。トータスシェルブラウンのボディを作る元のアクリルアセテートの延べ板を「おぼろ昆布」と称した人はいるが、言い得て妙だと思う。その「おぼろ昆布」をリザード柄に変えただけの手間を省いた分をこうした形で買い手に還元したのだと思えば、微笑ましくもあり、ペリカン社らしい誠実さも感じる。

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■ ペン先  : 14金 
■ サイズ  : EF
■ 機構   : ピストンフィラー 吸入式 / キャップ ネジ式
■ 材質   : ボディ> アクリル・アセテート / トリム> 14金 ロジウム仕上げ
■ 長さ   : 123mm (収納寺)/  約156mm(筆記時)
■ 太さ   : 11.5mmφ  / キャップ径:約13.5mmφ
■ 重さ   : 15g
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