パイロット・デラックス漆

    - Pen and message にて -

 2016年8月 神戸のペンアンドメッセージを訪れた。その頃、定期購読していた「趣味の文具箱」に、この万年筆店の店主である吉村史博氏が、コラムを書かれていて、その記事に共感した。
 万年筆専門店だからといって、何も高価な万年筆だけを置くのではなくて、1万円台で買えるような廉価な万年筆を置いておくのも、万年筆店として当たり前のことだというようなことを書かれていた。正確にその記事を覚えていないが、なるほど、万年筆も国産で比較的廉価でも良い万年筆は多くあると改めて発見したような気がした。
Delux Urusi

 早速に記事に書かれていた万年筆があるか、電話で問い合わせたところ、欲しいと思っていた細字があると聞き、その足で神戸に向かった。吉宗さんはいつものように温和な笑顔で迎えてくれて、注文の多い客である私の言うことを聴きながら、ほんの少しだけペン先を調整して私好みの書き味にしてくれた。
 私の注文は、システム手帳の6mm罫に澱みなく書けること、それだけだった。そして、その通りにこの万年筆を調整して貰った。
Delux Urusi

    - パイロット・デラックス漆 -

 パイロットと言えば、カスタム74シリーズが本筋だ。そんな中で、このデラックス漆は少し異端児かもしれない。クリップもパイロットの象徴である丸玉がついていない。あくまで、普段気軽に、しかし、大切なことを書くことを念頭に置いて作られたのかどうか、知る由もないが、私はそう思っている。
 パイロットの万年筆は大別して、カスタムシリーズ、ヘリテイジシリーズ、キャップレスシリーズ、グランセシリーズ、カバリエシリーズ、コクーン、そしてカクノといったところだろうか。

     万年筆&インクのインデックス
Delux Urusi

 その中でこのデラックス漆は少し異種な形をしている。クリップはヘリテイジシリーズのそれだが、軸の太さは、細身のグランセシリーズのそれに近い。色は三色だけで、ブラック・ディープレッド・ダークブルーの3つだ。他のシリーズに比べると、色のバリエーションは少ない。色とりどりの他のシリーズより、パイロットがこれを使う人を限って生産しているのではないかと思えてしまう。
Delux Urusi

 この万年筆の特徴は、なんと言っても、細身の軸だが、漆加工されているので、手に持って滑らす、しっとりと手に馴染むところだと思う。漆と言えば、いろんな柄の入ったものが頭に浮かぶが、このデラックス漆は単色で漆であることを持つ者にしか分からないい奥ゆかしさがある。
 毎日使うシステム手帳の6mm罫にちょうど良い軸の太さだ。これを手にして以来、私はアシュフォードのリフィルと共に使い続けている。いつ書いても、書き味はもとより、軸に飽きない。
二本刺しペンケースにモンブランのボールペンと一緒に入れて常に持ち歩いている。
Delux Urusi


 見かけより重いので、ペンがふらつかない。嵌合式キャップなので、会議の途中で話を聞く時はキャップを付けて、その内容をメモする時はキャップを尻軸に嵌める。その行為が実に簡単で実用的だ。
 まだ2年の付き合いだが、これからも大切に使える万年筆だと思っている。買って値打ちのある万年筆だ。吉宗氏もきっと、こんなことを思われたのではないだろうか。

 PILOT DELUXE URUSHI

■ ペン先 : 14金 /  文字幅 : F
■ 仕様  : 軸さや /  黄銅 漆塗り仕上げ
■ 機構  : カートリッジ/コンバーター両用式 / キャップタイプ
■ 仕様  : ボディ&キャップ / ステンレススチールパラジュームコート
■ 長さ  : 約133mm(収納時) /  約/146mm(筆記時)  軸径最大:約11.5mmφ
■ キャップ径 : 最大:約11.5mmφ (クリップを除く)
■ 重さ  : 約25g

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