- 手帳考 -

 システム手帳を使い始めて、長い年月が過ぎた。私はシステム手帳を「持って歩くもの、アナログな可動式文具」と思っている。机の上に置きっぱなしにしておくなら、ノートで良い。持って歩くには、それなりに頑丈でなければ、すぐにボロボロになる。そうなって良いものならノートでも良いと思う。
 私にとってシステム手帳は一年限りのノートとは使い方の趣旨が違うものだと思う。今は、種類の違う2つのシステム手帳を使っている。長く持つ物だからこそ、良いものであらなけれなならない。

 日記をつけるのは日記帳で、簡単なメモをとるのはメモ帳、講義の内容を克明に記すのは大学ノートというように、それぞれ違う呼び名がある。システム手帳は、言わばそれらを総合したものだ。人それぞれに使い方が違う。これもシステム手帳の面白いところだ。私が、「それらを統合したもの」と思っているのは、私がそのように使っているからだ。

 2つのシステム手帳を使っているのは、用途が少し異なるからだ。持ち歩いて、時には立ったままで書く時には、「ミニ6穴」がちょうど良い。筆記具も万年筆よりボールペンの方がペン先の渇きに気をとられることがなくて良い。机の上で、万年筆を使ってじっくり書くには、バイブルサイズが良い。
 バイブルサイズ以上の大きさは、持ち歩くのに容量が大きすぎる。バッグの中を占領してしまう。これは困る。故にバイブルサイズが良い。それもリング径の小さなものの方が何かと適している。筆記にちょうど良い薄さと嵩張らない厚さが、主張もし過ぎずに心地よい。

   ペン・アンド・メッセージ オリジナルのシステム手帳 "カンダミサコ作"
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  ペン・アンド・メッセージ オリジナルのシステム手帳リフィル
  "カンダミサコ作" 「筆文葉」5種類のデザインがある
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   第六十七回全国植樹祭で詠まれた御製
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 アシュフォード ミニ6穴 リザード柄カバー
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  エイジングしたものは好きだ。逆にエイジングのできないものは趣味に合わない。
 しかし、これはエイジングを超えて、そろそろ記念品になりそうだ。
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Kaweco & Faber-Castell
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Kaweco Mechanical Pencil & Faber-Castell Eraser

    - 気遣いのある刪改 -

 職場で回議書を見ると、起案者の文書に手を入れることがある。誰が訂正したのか分かるように付箋に名前を書いておく人もいれば、訂正箇所の色を変えたりする人もいる。訂正をさらに訂正したり、訂正前に戻したりすることもある。

 私は、訂正には起案者がプレッシャーを感じないようにするためにシャープペンシルを使うことにしている。赤色のボールペンで訂正されると起案者はどう思うだろうかと想像する。分かりやすくて良いと思う人と、いかにも自分の起案文書が間違っていてミスしたことを過度に反省してしまう人がいるのではないだろうか。
 後者の場合、次に文書を作成する時には何の面白みもない無難な文書を作ってしまう。文書には個性があって当然だ。受け取る人の立場になってみると、紋切型の文書は読み飛ばしたくなる。仕事上の文書だと割り切るから余計に意図が伝わりにくい。仕事上の文書であっても、書き手の個性がふとした句読点の使い方や結びの文などに目を引かれることがある。そんな文書は内容も記憶に残る。
 私自身が文書を作る時は受け取る人に忘れられないような文書にすることを心がけている。ともあれ、文書を添削するということは、実に気を遣うものだ。また、気を遣わなければならないものだ。

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    - カヴェコのシャープペンシル -

 回ってくる文書は、10.5か12ポイントの小さなワープロ文字で行間も狭い。
 訂正する文字も自然に小さくなる。0.5ミリ芯のシャープペンシルが役立つ。まだこのページでは記事にしていないもう一つのシャープペンシルと、このカヴェコのシャープペンシルが仕事用の2本だ。カヴェコと言えば、万年筆とボールペンがセットになって、専用ペンケースと3点セットで販売されている定番モデルが世界的に有名で愛用者も多い。
 数年前、万年筆店をいつものように徘徊(?)しているとカヴェコのコーナーに見たことの無いシャープペンシルが陳列されていた。どうやら新作らしい。早速、ショーケースから出してもらって試し書きをしてみた。重さや握り具合がとても良い。ボディはつや消しの黒でペン先は鉛筆のように木製感を出している。さすがはドイツ職人の作りだと感心した。真面目に鉛筆を再現したシャープペンシルだ。その場で自宅用に包装してもらった。
 自宅に帰って、別のメーカーの替芯を入れてみた。すると、店で書いた書き味と違う。替芯も純正なのかと思って、万年筆店に電話をしたところ、メーカーに問い合わせていただくことになった。数日後、万年筆店から返答の電話があり、見本に入っていた替芯は日本のぺんてる社の替芯だとわかった。近くの文房具屋さんでぺんてるの0.5ミリ芯を買って来て入れてみると書き心地が良い。
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    - ファーヴァーカステルの消しゴム -

 ファーヴァーカステルの消しゴムと言えば、ラウンドシェープイレーザーが有名でフラッグシップになっている。廉価版の普通のプラスティックイレーザーも汎用として販売されているが、これは日本製の方が性能が良い。ラウンドシェープの方は、消しゴムが1万5千円近くする。誰が、使うのだろうかと思ってしまう。もっとも鉛筆を一本10万円で売っているメーカーだから消しゴムもそのくらいが相場なのだろう。ラウンドシェープのほうはさておき、今回私が紹介している繰り出しケース付きイレーザーは気にせず手に入る価格のものだ。しかし、これが優秀で手放せない。文房具で一番失くしやすいのが消しゴムだ。落としても音がしない。だれかのを使っても返すのを忘れるし、忘れられる。名前でも書いておこうかと思う。(笑)
 この繰り出しケース付きは、その点安心だ。後部に空いている穴もペン立てに使える。職場で使っている2本のシャープペンシルは見事にこの穴に収まってペン立ての役割を果たしてくれる。偶然とはいえ、細やかな発見と使い道に少し顔が綻ぶ。

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    麗容なる筆記具

 インクを試す時、重宝するのがガラスペンだ。一番よく使うのは、エルバンのガラスペンだ。他に2本所有している。一本は、贈り物として貰った「北一硝子」の有名な職人さんの作であるもの。そのガラスペン職人さんの名前は残念ながら教えて貰えなかった。もう一本は、先日、私自身が小樽の北一硝子を訪れた時、土産にと買ったものだ。  その時、小樽の店員さんと色々話をしているうちに、ガラスペンは有名な作者のものや色が多く使われているほど価値があり、値段も数千円から数万円までの幅があることを知った。

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 ガラスペンを使うのは、インクを試す時だけではない。誕生日カードを書くのにボルドーのインクを使いたいと思った時、万年筆にインクを入れずにガラスペンで認める。例えば、そんな時のように、あまり使わないインクで書きたい時にはガラスペンを使う。
 ガラスペンで書いた文字には味わいがある。インクの濃淡や線の太さの変化など万年筆では出せない趣や情感が紙の上に沁み込んでいく。私が所有している3本のガラスペンでもそれぞれ書き味や線に違いがある。一本一本手作りなので当然のことだ。

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 ガラスペンの効用は他にもたくさんあるだろう。京都の某万年筆専門店では、世界中のほぼ全てのインクが取り揃えられていて、試し書きができるという触れ込みだったので、開店して間もなく訪ねてみた。
 触れ込み通り、どのインクも試すことはできるのだが、書くために用意されたのがスチールの付けペンだった。私はそれでがっかりした。金属付けペンだとインクがすぐに無くなる。
 その点、ガラスペンは最低でも葉書一枚から、優秀なものではA4の用紙一杯に一度インクを浸しただけで書くことができる。水に浸けて洗えば簡単かつ完璧にインクの付いていない元の状態に戻る。

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Fude-pen

    - 和の趣 -

 机の上に置いていて、ほっとするものがある。人によってそれぞれそんな物が一つや二つは必ずあると私は思う。気が多い私にはそれが一つや二つではない。いくつもある。
 そんなものの一つが、筆と硯だ。とくに硯には、何か人を和ませる穏やかな精神性というか品格というか、とにかく、無機質な物ではない何かを感じる。デスク周りには洋物が多い私にとって、「和」を想わせてくれるところがほっとする要因かもしれない。
 硯は何面か持っている。父に貰ったものと自分で購ったものだが、どれも形や装飾に魅力がある。硯ごとに硯箱を用意するのも楽しい。我が国には道具を大切にする文化が昔は根付いていた。器に文化があった。

    - 京都 岡重の筆ペン -

 硯のことは、また機会があれば下手な講釈を垂れるとして、ここからが本題。筆ペンの話だ。大きなファイルの背表紙や掲示物に文字を書くときには、筆ペンを使う。職場や出先では、墨と硯を用意して書くわけにはいかないことが多い。そんな時、太い線も細い線も自在に書ける筆ペンが役に立つ。この筆ペンに出逢うまでは、万年筆の形をしたクリップ付き筆ペンを携帯用にしていたが、どうも違和感があった。その形や重さがどうも、和の筆にそぐわない。



 何年か前に京都伊勢丹で催し物があって、その時発見したのが、この岡重の筆ペンだ。試し書き用の和紙も置いてあって、試してみると、なんとも軽くて書き味が良い。即決で朱色の一本を購入した。岡重さんは、この筆ペンを入れる更紗の筆入れを主眼に作ったらしいが、そこは京都の職人のこと、中身の筆にも古き良き京都の伝統文化を大切にしようと特別に筆も作ったらしい。



 ペンのボディは軽くて丈夫な合成樹脂(ポリプロピレン)に漆を塗ったもの。穂先は、ぺんてる社が特別に作った合成樹脂で、これが、一本数百円で販売されているものとは違い、極めて細くて柔らかい。イタチやタヌキなどの獣毛で作った穂先と全く遜色がない。
 筆管の握り心地といい、穂先の感触といい、私はすっかりこの筆ペンが気に入って、一週間後にもう一本、黒軸のものを買い求めた。



 朱色の方は自宅使いに、呂色の方は職場に置いて必要な時に取り出して使う。墨と硯を用意する時間と必要がない時には、実に便利であり、書く時に筆の趣を十分に楽しめる。

  リンク:京・老舗「岡重」
  リンク:小宮真由さんのブログ「大人の文具」

Inkwell

    - 神戸北野で出逢ったインク壷 -

 1985年6月21日に、私はこのインク壷と出逢った。
 神戸北野の異人館巡りをした帰りのこと、骨董屋さんというわけではないが、色々な雑貨を置いている店に立ち寄った。
 たくさんある異人館の元住人が帰国の際、故郷には持ち帰らない品々を処分同然というか、かなり安価な値で付近の行商に譲ったらしい。棚や机などの家具は、家に付属している、言わば家の一部と考えるのが欧米の人たちである。それらの家具類は今や観光客の目の保養の的になっている。
 異人館といっても、元々は国の大使をはじめ、高い地位にあった人たちの住居である。今も残っている館とその付属家具以外にも、当然、小さな生活雑貨が多数あった。

 私は幾度か北野に足を運び、いくつかあった先の雑貨屋さんを覘いては使えそうな万年筆を物色していた。10本近い万年筆を購うことができたと思う。そんな時、とある店でこのインク壷と出逢った。それほど値の張らない品だったので、気軽に手に入れたのだが、日に日に魅力を感じるようになり、以来、私の机の上にはいつもこのインク壷がある。
 たまに、インクを入れてはスチールの付けペンやガラスペンでゆったりと手紙や葉書を書いている。何分長い付き合いなので、そこにいてくれるだけでほっとする存在だ。

 ちなみに、私がこのインク壷を購った日付が正確に分かるのは、当時は、こうした品物には手に入れた日が分かるように、日付を書いた紙を裏に張っていたからだ。その紙のインクの色は褪せているが、はっきり日付が分かる。

 最近も北野に出かけることはあるが、風情はすっかり変わってしまった。

 ■ 仕組:二つのインク壷はそれぞれ4つの素朴な金具で挟まれている。
            簡単に抜いて水洗いすることができる。
            ガラス以外の部分の素材が何かは分からないが、ずっしりと重い。

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Tag & Sticky Note

    - coco fusen -

「ふせんはいつもココにいるよ」というアフォリズムで売り出されたこの付箋は、昨年グッドデザイン賞を受賞した。株式会社カンミ堂の逸品だ。
小さくて可愛い付箋だが、なかなかの機能を持っている。順に言うと、この付箋はケースごとに貼付けられる。(写真左上)ケースから取り出すと、次の1枚が取り出せるように上下交互に出てくる。つまり、ティッシュペーパーの要領だ。
 ケースの中で蛇腹に粘着部分が重なっている。下の写真のピンクの付箋は下が出ている。次の利点は、その薄さと粘着性だ。極めて薄く小さいので、何枚張ってもページの邪魔にならない。また。粘着性が高いので、栞の役目を十分に果たす。(写真中央左)透明度が高いので、付箋を張っても下の文字が見える。(写真右上)
 私は上にあげた機能を使って、ノートや本の整理と目印にしている。他にもこの付箋はボールペンか鉛筆でなら文字を書くことができる利点があるが、その機能は利用していない。それらの筆記具を使う人にとっては、便利な機能だと思う。
 私がこの付箋が気に入っている理由のもう一つは、無地であることだ。似たような付箋があっても、色々な柄や模様、何かの絵が描かれている。それが、私には邪魔だ。やはり、無地が良い。4色あれば、十分に整理や目印になる。もっとも、よく使うのはグレーとピンクだ。重要度に合わせて、自分なりに色を使い分ける。

    - My Post-it -

 <ウィキペディアより引用>
最初の糊付き付箋製品であるポスト・イット (Post-it) はアメリカの化学メーカー3Mによって開発された。1969年、同社の研究員スペンサー・シルバーは強力な接着剤を開発中に、たまたま非常に弱い接着剤を作り出してしまった。当初この弱い接着剤は用途が見つからなかったが、1974年に同社研究員アーサー・フライが本の栞に応用できないかと思いついた。このエピソードは、偶然から大発明を生む「セレンディピティ(偶察力)」の典型例として知られる。1977年には試作品が完成、テスト販売では当初苦戦するが、大企業の秘書課に配られた試供品が好評を博し、1980年の全米発売につながる。それ以降、ポスト・イットは世界中に広まり、現在では100ヶ国以上で販売されている。

 ポストイットの歴史には感慨深いものがある。今や付箋といえば、ポストイットと言っても通るくらいになった登録商標だ。
 我が国では、数年前から住友スリーエム社がこのポストイットをオンラインでカスタマイズできるシステムを作った。ポストイットと言えば黄色が定番だが、自分の好きな色に好きなデザインを付すことができるシステムだ。3年ほど前に試しに作ってみたが、なかなか使い勝手が良い。自分の名前があらかじめ入っているので、メモを誰かに渡すときにも自分からだと分かってもらえる。(写真中央右)それまでは、シャチハタでハンコを押していた。
 専用ケース(写真下)も作られるようになって、ポケットに入れていても散けることがなくなったので、ちょっとした自分用のメモにも使える。このちょっとしたメモが役に立つ。手帳に書くまでもないが、例えば、この数字は一時的にメモしておきたいと思う時など、普通のメモ用紙なら失くしてしまいそうになるところが、その心配がない。
 たかが付箋、されど付箋だ。ビジネスシーンにほんの少し余裕と楽しみを加えてくれる。

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