インク壷

Inkwell

    - 神戸北野で出逢ったインク壷 -

 1985年6月21日に、私はこのインク壷と出逢った。
 神戸北野の異人館巡りをした帰りのこと、骨董屋さんというわけではないが、色々な雑貨を置いている店に立ち寄った。
 たくさんある異人館の元住人が帰国の際、故郷には持ち帰らない品々を処分同然というか、かなり安価な値で付近の行商に譲ったらしい。棚や机などの家具は、家に付属している、言わば家の一部と考えるのが欧米の人たちである。それらの家具類は今や観光客の目の保養の的になっている。
 異人館といっても、元々は国の大使をはじめ、高い地位にあった人たちの住居である。今も残っている館とその付属家具以外にも、当然、小さな生活雑貨が多数あった。

 私は幾度か北野に足を運び、いくつかあった先の雑貨屋さんを覘いては使えそうな万年筆を物色していた。10本近い万年筆を購うことができたと思う。そんな時、とある店でこのインク壷と出逢った。それほど値の張らない品だったので、気軽に手に入れたのだが、日に日に魅力を感じるようになり、以来、私の机の上にはいつもこのインク壷がある。
 たまに、インクを入れてはスチールの付けペンやガラスペンでゆったりと手紙や葉書を書いている。何分長い付き合いなので、そこにいてくれるだけでほっとする存在だ。

 ちなみに、私がこのインク壷を購った日付が正確に分かるのは、当時は、こうした品物には手に入れた日が分かるように、日付を書いた紙を裏に張っていたからだ。その紙のインクの色は褪せているが、はっきり日付が分かる。

 最近も北野に出かけることはあるが、風情はすっかり変わってしまった。

 ■ 仕組:二つのインク壷はそれぞれ4つの素朴な金具で挟まれている。
            簡単に抜いて水洗いすることができる。
            ガラス以外の部分の素材が何かは分からないが、ずっしりと重い。

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