Recife Crystal Gray

    - 美しく楽しい万年筆 -

 前から気になっていた美しい万年筆だった。しかし、なかなか実物を見ることができなかった。レシーフ社は1987年に2人のフランス人デザイナーによって創立された新しいメーカーだ。故に、このメーカーを店頭に置いている万年筆店は少ない。メーカーとしては日本ではマイナーなのだろう。

 最近訪れた書斎館(南青山)には数種のモデルが置かれていた。全てのモデルを試させていただいたが、私はこのクリスタルに一目惚れしてしまった。

 ボディの大きさ、書き味、バランス等々、気に入った点は一つではないが、何よりもそのデザインの美しさが私を虜にした。この万年筆が普段傍らにあれば楽しいだろうなぁという思いが湧いてきて、他のモデルはすっかり眼中から消えてしまった。

 手に入れたばかりの万年筆をこのブログに載せるのは初めてだが、画像でも見ていたいという思ったからだ。しかし、やはり傍らにある実物を見ているのが楽しい。

    - 機構 -

 レシーフクリスタルのもう一つの魅力は、機構だ。この万年筆は、単純に3つのパーツからできている。首軸とボディとキャップだ。首軸のネジを回して外すとインクを入れるタンクだけのボディになる。

 スポイトでインクを注入する。インク止め式万年筆と似ているが、この万年筆にはインク止めの仕掛けはない。インドの万年筆にこの構造が見られるが、あるいは、それがヒントになったのかもしれない。しかし、ボディを透明にしたのは、インクを見せてボディの模様にすることも計算されたデザイン上の構造であることは明白だ。

 スポイトならなんでも良いのだが、オリジナルのスポイトが付属している。このスポイトも小さいながらもすっきりしたデザインで可愛い。また、スポイトを使わずにインクを入れる特殊なカートリッジも別売である。これらを並べてみると全てがトータルのデザイン重視で作られていることがわかる。さすがに、デザイナーが作ったメーカーだ。

 ペン先がスチールで廉価であることも、あくまで普段使いに使って欲しいというコンセプトからなのだろう。

    - 調整 -

 いくらデザインが気に入ったとはいえ万年筆は書くための道具だ。より良い書き心地であってほしい。

 万年筆が線や文字を書けるのは、簡単に言えば2つの現象を利用しているからだ。一つは、重力。重力があるからインクが下に流れる。もう一つは、毛細管現象。インクタンクからペン芯に沁み込んだインクがペン先の切り割りを毛細管現象で登っていく。ペン先に触れると、今度は紙の細かな繊維の間にある毛細管がインクを吸い込んでいく。これも毛細管現象だ。一般に便箋などの紙は毛細管が荒く、インクをよく吸い込むのでよく滲む。

 私はこの万年筆をあまり滲まないメモ用紙に使いたかったので、ペンクリニックに行って、インクフローを潤沢にしてもらった。ついでに、わずかにずれていたペン先も直してもらったので、今はベストコンディションで心地よく筆記している。

【ペン先・機構等】

 ■ 文字幅 : M
 ■ スポイド吸入式
 ■ 長さ : 約148mm(収納時) / 約177mm(筆記時)
 ■ 軸径最大 : 約11mmφ
 ■ キャップ径最大:約9mmφ(クリップを除く)
 ■ 重さ : 約22g