1960's Sheaffer Imperial Ⅳ Deluxe

     - シェーファー万年筆 -

 シェーファーの万年筆が日本で広く知られるようになったのは、1970年代の初め頃だった。それまで海外の万年筆メーカーとしての有名どころと言えば、モンブランとパーカーであり、シェーファーが高級万年筆として2つに続いた。
 もちらん、他の海外メーカーも万年筆を百貨店や高級文具店に製品を並べていたが、それほど種類も多くなく、この3社には及ばなかった。
 私が万年筆に興味を持つようになった頃とシェーファーの本格的な日本デビューは、奇しくも時が同じだった。

 1960年代~70年代のシェーファーには名品が多く、今でもビンテージ万年筆として中古品が取引されている。インペリアルシリーズは、1961年から1976年まで製産されていた名品だ。このインペリアル4型は初期のものであり、装飾は極めてシンプルで、ボディーに小さく
  "SHEAFFER" "MADE IN U.S.A." と刻印されているだけだ。
 しかし、一目でシェーファーとわかる短めのクリップにホワイトドットと、キャップを開けると、目に飛び込んでくる大きな菱形のインレイド・ニブのペン先が、洗練されたスタイルと調和してエレガントに個性を湛えている。

 シェーファーが万年筆メーカーとして確固たる地位を得たのは、レバー充塡式万年筆の特許を取得してからだが、1920年に、構造上の故障にたいして永久保証が適用されるライフタイムペンを発売し、その後、空気の圧力を利用してインクを吸入するタッチダウン式万年筆を考案し、これも特許を得ている。

     - インペリアル 4型 -

 インペリアル4型は、40年以上前の万年筆で、タッチダウン式インク充塡方式だ。尻軸のネジを緩めて金属管を引き出す際に、空気を押し出して真空状態にして、尻軸を押し込む時にインクを吸入する。
 金属管を引き上げる瞬間、また金属管を押し込む瞬間に耳を澄ますと、「プシュ」っという小気味よい音が鳴る。それが何とも愛おしい。

 重さは非常に軽く、ペン先Fの細字でも、中型万年筆の用途とは思えないほど大きな文字から小さな文字まで書ける。
 通常、私はペン先は鉛筆の芯のように中央に向かっている方が書きやすいと思っており、他の万年筆は必要とあらば、そのように調整している。
 しかし、このインペリアル4型は全く逆で、ペン先が穏やかに上を向いて反っている。紙にペン先が当たるときの柔らかい感覚はこの「反り」が生み出している。他の万年筆と違う面白くも小気味よい書き味を思い出し、最近はよく使っている。
  
 ちなみに、インペリアルには、パイロットの色彩雫インク「月夜」を入れている。ボディとよく合う色合いで、線も綺麗に書ける。
 また、最近、現代にこのインペリアルのペン先とスタイルを受け継いでいる「レガシー」を一本購入した。このレガシーにはブルーブラックのカートリッジインクを入れている。

  【ペン先・機構等】

  ■  ペン先: 14金 インレイド・ニブ
  ■  サイズ: F
  ■  機構 : タッチダウン吸入式
  ■  長さ : 137mm(収納時) 146mm(筆記時)
  ■  太さ : 11mm
  ■  重さ : 17g