Pelikan Souverän M101N Tortoise Shell Brown

    - 2011年6月 -

 この万年筆は、私がこのホームページを立ち上げた時、2011年6月に購入したものだ。テストの記事を除いて、初めて"Blog"の記事を書いたのもこのペリカンM101についてのものだった。
 その記事の冒頭を再掲する。ペリカン社の発売に際してのコメントだ。

 1937年にペリカンは最初のM101Nを発売し大成功を収めました。全部で6モデルが販売されましたが、トータスシェル・ブラウン・モデルが、後に最も探し求められたビンテージ万年筆のひとつとなりました。当時このモデルはドイツ国外のみで販売されました。このモデルの形と色は、現在でも多くのビンテージ万年筆の収集家や愛好家に好まれています。ペリカンではこのM101Nトータスシェル・ブラウンを特別生産品として発売致します。
 トータスシェルの胴軸とキャップはオリジナルではセルロイドが使われていましたが、この度発売されるモデルはセルロース・アセテートが使われています。ペン先はオリジナルと同様14金で現代の万年筆と比べると1937年のモデルのように小ぶりに作られています。こげ茶色の部分は高級樹脂でできており、クリップとリングは14金ゴールドプレート仕上げになっています。   
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 ブログの記事にも書いたように、京都伊勢丹でこの万年筆を試し書きした時、私はその書き心地とボディの美しさに憑かれてしまった。大きさはスーベレーンM600くらいだと思った。正確に計った訳ではないが、M800より一回り小振りに作られていることは常々M800を使っているのですぐに分かった。スーベレーンM600はボディが小さいだけではない。M800や1000に比べてペン先が固い。だから、見た目の大きさがM600と同じだからペン先も同じように固いだろうと想像していた。ところが、実際に文字を書いてみた瞬間にこれは違うと思った。

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    - ぬらぬらと書く -

 万年筆の良さを表すのに、「ぬらぬらと書ける」という言葉が使われる。これは、日本の筆や、ボールペンや鉛筆には使われない特別な表現だ。「スラスラ」とか「スイスイ書ける」という言い回しは他の筆記具でも用いられるが、「ヌラヌラ」は万年筆だけだ。
 そのヌラヌラ感がこのM101Nにはある。いくらボディが良くても書き心地が悪ければ万年筆として用を成さない。万年筆の善し悪しはペン先と書き心地によって決まる。ビンテージ万年筆が高価な値段で取引されているのは、このためだと私は思っている。
 その良い例がモンブランだ。モンブラン社は、今や一つのアクセサリーブランドの一つになってしまって、ボディの装飾やペン先の見かけにだけ力を入れすぎているため、単にモンブランショップが近くにある場合は、店にモンブラン万年筆を置けないという理不尽な規定だけでなく、心ある筆記具店は自らモンブランを置かない主義を取り始めて久しくなる。

 復刻版とはいえ、ペリカン社は今も万年筆作りの拘りを失くしていないので、売り出された当時とほぼ同じ書き味を再現したのだと思う。ペリカーノジュニアという万年筆は、小学生が正しくペンを持ち、美しい文字を書けるようにとペリカン社が今も作り続けている。大人が使っても実に使いやすい。
 拘りというのは、人で言うなら生き様であり、会社で言うなら会社の有り様への執着だ。時には、両刃の剣になることもある。しかし、なんの拘泥もない人やメーカーに良いものは作れないことは確かだ。

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 さて、私はこのM101トータスシェルブラウンをどのように使っているかと言えば、一つは、原稿を書く時、もう一つは便箋に文字を認める時。この二種類の作業をおいて他には使わない。それが、この万年筆への私の拘りと言える。

    - ペリカンとブルーブラック -

 インクはオリジナルのブルーブラックではなく、ペリカンのブルーブラックを入れている。最近、地球環境への配慮ということで、インクも昔は配合されていた酸化鉄を含まないものが増えている。昔ながらのブルーブラックを「古典ブルーブラック」と呼ぶらしい。どれほどの人が、どれほどの量の文字をブルーブラックのインクで書くのかは知らないが、少し馬鹿げた話だと思う。
 地球の環境がどうのこうのと言い出される前から、ペリカン社のインクはその粒子の細かさで他のメーカーと一線を画していた。粒子の細かさはインクの粘度に関係するだけでなく、インクの色の経年変化にも影響する。私は色々試してみた結果、ブルーブラックのインクの基本はペリカンのそれと決めている。少なくとも、1年後に見返した時に落ち着いた色のままで文字たちが佇んでいる。

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 M101Nのボディは、セルロース・アセテートで出来ているのでレジンよりも柔らかい。その柔らかさが手にした時に指に伝わってくる。軽く摘まむだけで吸い付くようにぴたりと握ったポジションが決まって変わらない。インク窓から見える中のインクが内部で付着していないのは、ボディの内部までが隙無く磨き上げられていることの証明だ。実に入念に作られている。

 私はこのM101の復刻版の第二弾を待っていた。第二弾であるM101リザードが出ると発表された時は、早速に手に入れた。    ブログへのリンク

■ ペン先  : 14金 
■ サイズ  : F
■ 機構   : ピストンフィラー 吸入式 / キャップ ネジ式
■ 材質   : ボディ> アクリル・アセテート / トリム> 14金 ゴールドプレート
■ 長さ   : 123mm (収納寺)/ 約156mm(筆記時)
■ 太さ   : 11.5mmφ
■ 重さ   : 15g