Montegrappa Heritage Silver

    - ヘリテイジとレミニセンス -

 この万年筆の発売時期はわからない。モンテグラッパ社は、銀製品の加工で有名な土地柄から、創設当初全て純銀のハンドメイド万年筆を主流に作っていたらしい。ヘミングウェイが愛用していたことは有名だ。
 この万年筆に大きさや形がそっくりなレミニセンスというモデルは1915年に発売され、その復刻版が1990年代まで販売されていた。レミニセンスは、モンテグラッパの特徴とも言えるオクタゴナル(八角形)の形をしている。調べる限り、レミニセンスの方がよく売れたようだ。恐らくヘリテイジはレミニセンスより早く販売を止めたと思う。
 ヘリテイジとレミニセンスには、鏡面と組紐模様の2種類がある。これも組紐模様が刻まれている方がよく売れたらしい。総合的に推察すると、このヘリテイジの円筒形で鏡面の万年筆はあまり世に出回らなかった。
 私は、このポケットサイズの円筒形が気に入っている。見ていて厭きない。模様や形がうるさくない。唯一、クリップの美しい曲線だけが見る目を楽しませてくれる。

    - 純銀ボディの万年筆 -

 純銀ボディの万年筆は2本目になる。1本目の万年筆が最近行方不明になり、暇があれば家中を探し回っている。20年ほど前に購入したものだが、つい最近まで使っていた。少なくとも、このホームページのある画像には写っているのだが・・・。
 このモンテグラッパ・ヘリテイジもそうだが、純銀ボディの万年筆は少し放っておくと、すすけて黒ずんでくる。空気中の硫化水素と反応するからだ。銀製品の宿命とも言える。定期的に磨かなければならない。怠ると真っ黒になる。この点手間がかかる。しかし、磨くとピカピカになるので、この作業も楽しい。

    - 用途 -

 細字万年筆をよく使うようになってから何本か新しく購入した。使っているうちに、細字にも書き味があり、その違いが最近わかるようになってきた。実用として日常に使って優れているものと、書き味が楽しめるもの、その両方のオールマイティのものなど様々だ。
 このヘリテイジは実用として優れている分類に入る。書き味やインクフローは良いが、このペンで手紙を書こうという気にはならない。ちょっとしたメモや予定をたっぷり時間がある時に、ゆっくり書くのにはこの万年筆が最適だ。

【ペン先・機構等】

 ■ ペン先 : 18金
 ■ 文字幅 : F
 ■ ボディ素材 : スターリングシルバー
 ■ 長さ : 約120㎜ / 160㎜
 ■ 太さ : 約9mmφ
 ■ 機構 : カートリッジ/コンバーター両様式
 ■ キャップ : ネジ式 (筆記時・収納時)

Montegrappa NeroUno

    - ネロウーノ 細字 -

 モンテグラッパの新しいデザイン、ネロウーノと初めて出逢ったのは、これが発売された当時だった。2007年のことだ。
 JR京都伊勢丹の万年筆売場のショーウィンドウの中で、そのデザインが私の目を引いた。モンテグラッパというメーカーは知っていた。イタリアの万年筆は、それがイタリア万年筆らしいところなのだろうが、デザインに奇を衒うことが少なくない。奇を衒うというのは良い表現ではないが、斬新というのは褒めすぎるかとも思う。芸術的というのが一番無難な表現か。それが良いと思う人には、この上ない魅力なのだろうが、私はそうではない。イタリアの万年筆は何本か所有しているが、どちらかというと控えめなデザインが殆どだ。

 オーソドックスで厭きのこないものが良い。これは、万年筆以外でも、身の回りの品を求める時の私の習性だ。スーツはこのブランド、靴はこのブランド、時計はこのブランドというふうに何十年も同じものばかりを身につけている。しかし、これは習性であって確固たる信念や主義といったものではない。だから、時々揺らぐ。揺らいでは後悔することもある。
 ネロウーノを初めて見たときは違った。試し書きをさせてもらうと、ペン先の柔らかな感触とバランス、軸の太さなど申し分なかった。しかし、その当時は字幅が中字の万年筆にしか興味がなかったので、伊勢丹にあった細字を購うことはなかった。最近はやたら手帳にスケジュールやメモを書くことが多くなったので、細字万年筆を求めることが増えて何本かを手に入れたが、細字万年筆も使ってみると、なかなか味わい深いことがわかった。

 もう一本細字万年筆をと思って、京都伊勢丹を訪れた。シェーファーやカレンの細字はすでに同じ売場で購入していたので、色違いで、どちらかを探すつもりで行ったのだが、一本一本書き味が違うので迷っていたところ、店員さんが、以前にネロウーノを試し書きしていて、これが中字だったらなぁと言っていたことを思い出してくれて、「これは確か試し書きをしていただいたものです」と言って、ネロウーノを奥から出してきてくれた。メーカーには返されていなかったのだった。
 私はすっかり忘れていたし、ショーケースにもなかったので、思いがけないことだった。初めてネロウーノを手にした時のことを思い出して、この万年筆をいただいた。

    - モンテグラッパ -

 モンテグラッパは、イタリアのバッサーノ・デル・グラッパという蒸留酒が特産の地で、1912年に設立された万年筆メーカーだ。この地は、銀工芸品の精密さでも有名だ。私はネロウーノより前に銀無垢のモンテグラッパを持っていた。グラッパとは、この地の蒸留酒の名前である。私はグラッパの入った精巧に細工されたボトルを部屋に飾っている。中身は飲んでしまったが。バッサーノ・デル・グラッパの職人の腕のほどは、これらの工芸品から十分に伺える。

 万年筆も細部にわたって精巧に作られている。装飾部分はもちろんのこと、内側のネジなども寸分の弛みや違いもなく心地よくぴたりと締まる。
 ペン先はあっさりしたブランドロゴが刻印されているだけだが、それが却って金属部分の精緻さを強調してるように思える。その分、温もりは感じられないが、反対に清涼感がある。インクの色を工夫することで、ボディとのバランスが生み出されるので、今は、グリーンの暖色系のインクを入れて使っている。
 他の細字万年筆のインクの色と組み合わせれば、スケジュールのカテゴリーや内容によって使い分けられるので楽しい。

【ペン先・機構等】

  ■ ペン先 : 18金 文字幅 F
  ■ サイズ : 長さ:約144mm(収納時)最大胴軸径:約14mmφ(クリップを除く)
  ■ 重さ : 約29g
  ■ 機構 : カートリッジ/コンバーター両用式
  ■ 仕様 : 胴軸 / キャップ