Parker 180 écorce
- Like a Dart -
The most unique feature of this pen is its nib. It's got a very interesting arrow shape nib.
And to me the whole pen when uncapped looks like a dart.
You can write on both sides of this nib. One side is M and the other XF.
The M side of the nib is glass smooth and very wet, this is a testament that this nib is good for everyday use. The XF side is slightly less smooth then the M side but it is still to ne expected since its such a fine point and in any case is still very smooth and a wonderful writer in its own right. This is very useful in case you need to change line wideness.
- 雑感" -
この万年筆ほど、私にとって不思議なものはない。1980年代初めに売り出されたようだが、私がこの万年筆を手に入れたのもその頃だったと思う。1970年代、私が高校生だった頃から万年筆を好んで使うようになって、他の万年筆は、それぞれ買った年月をおよそ覚えているが、この万年筆を買ったのは京都丸善であることしか思い当たらず、それがいつだったのか知る由もない。ただ、売りされた頃だろうと思うだけだ。これが冒頭に述べた不思議の一つだ。
百人一首 蝉丸 「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関」

加えて、この万年筆は、「ああ、そう言えばあの万年筆はどこだろう」と自問して探してみても見当たらず、失くしてしまったのだろうと思っていると、部屋や机を整理していると、ひょんな所から出て来る。確り管理できる今になってつくづく思うこの万年筆の不思議なところだ。持ち物を粗末に扱うことはないのだが、この万年筆に限っては不思議でならない。
3つ目の不思議は、このパーカー180に赤インクを入れていて、ネットで同じ所有者も書かれているように、インクがカートリッジから漏れ出して、さらに、軸の嵌合部分から漏れ出すので、気をつけないと手や衣服を汚してしまうことだ。ペン先から漏れ出したインクがキャップに溜まり、うっかりキャップを軸に刺そうとして指を汚してしまうこともあった。もちろん、純正のカートリッジを使っていても軸からインクが滲み出て来る。これが原因で、この万年筆を使わなくなり、「どこに行ってしまったのだろう」と時折探すことになる。しかし、不良品だから修理に出そうとも思わない。これも今考えると不思議なことだ。
- Parker 180" -
この万年筆の最大の特徴は、名前のとおり、180度ひっくり返してペン先を裏に向けても書けるということだ。ペン先の形も平らで、明らかにそのように製作されている。他の万年筆もペン先を裏返してもインクはある程度出るので書けなくはない。しかし、裏がして使うようには設計されていない。実際に裏返して使うことはないが、そのように設計されているのだからと、試しに書いてみると日本製の万年筆の中細字くらいの線の太さでスムーズに文字が書ける。

この万年筆は売り出された当時は女性に人気があったらしい。キャップを軸に嵌めれば、使用しない時の長さがより短くなる。普通の使い方では、Mの太さで、裏返せばeXtraFine(エクストラファイン)極細字になり(下の写真:ペン芯にX|Xの刻印が見られる)、しかも収納時の131㎜から127㎜と全体の長さはほとんど変わらない。通常の万年筆では、収納時と筆記時では明らかに長さが変わるので、初めてキャップを軸に嵌めると一瞬驚く。同軸の太さも最大径が直径9㎜、指を添える先端では約6㎜と細い。これも女性に人気があった理由と考えられる。女性は、ポケットにペンを刺すことは、売り出された当時はまずなかっただろうから、先ほどの私感で述べたインク漏れもさして気にならなかったのかもしれない。

さて、ひょっこりと現れたパーカー180だが、確り管理できるようになると、妙に魅力的な万年筆であり、折に触れ使いたくなり、ペン立てに立てているのを取り出して使うこが多くなった。大袈裟な言い方をすれば、この両面使用可能な万年筆はある意味で、昭和の時代の「文明の利器」のような趣がある。なお、私が丸善で購ったであろうこのパーカー180には軸の素材や柄に様々のバリエーションがシルバーの恐らくはステンレス製のものや、何種かの色柄のラッカー仕上げのものなどがある。今ではメルカリなどで数千円で手に入れることができる。手間はかかるが、ビンテージ万年筆の収集家ならコレクションの一本にされても良いと思う。
尚、ペン先は14金という説とスチールに金鍍金という説がある。私は、このしなり具合は14金だと思うが、今は調べようがない。自分が使う限り、14金だと思っていて何の問題もない。
- Both Sides of Nib are Available -
■ ペン先 : 14金 或いは スチール / 文字幅 : M & XF
■ 機構 : カートリッジ/コンバーター両用式 / キャップタイプ
■ 仕様 : ボディー & キャップ = スチール ゴールドプレート仕上げ
■ 長さ : 約131mm(収納時) / 約127mm(筆記時) 軸径最大:約9mmφ
■ キャップ径 : 最大:約9mmφ (クリップを除く)
■ 重さ : 約20g
Sheaffer imperial 777 G.F
- 私にとってのシェーファー万年筆 -
シェーファーインペリアル型万年筆は多くのバリエーションがある。私が所有しているものはその一部だが、どのバリエーションにも共通して言えることは、温かみだ。前に記事にしたインペリアル4型は、初期のもので、インクの吸入方式が何とも愛おしい。
シェーファーの万年筆は何本か購入してきたが、現在のフラッグシップになっているモデル"VLR"にはあまり魅かれない。機能やバランス面ではきっと優れているに違いないのだろうが、温かみを感じないからだ。
現在店頭に置かれているものの中では、温かみを感じるのはヘリテージまでのものだ。以前の記事にも記したが、最初にあの反ったペン先を見た時は、「これは違う」としか思わなかった。
最初に手にしたモンブラン149でさえ、当時の京都丸善の懇意にしてくださった店員さんにお願いして、ペン先を鉛筆のように中心に向かって1ミリ寄せていただいた次第だ。その当時、今から30年ほど前までは、文房具売り場からメーカーの国内代理店に出して調整していただくことができた。目の前で調整してもらうものではなかったが、何故か思い通りになって帰ってきた。
- 全身に金を纏った逸品 -
そんな私が、一度シェーファーを手にしてからはすっかりこの反りが気に入ってしまった。インペリアル777を手に入れる前に、同じく555を持っていた。こちらの方は、プラスチックのボディなのでキャップをボディに差し込んだ時、確り一体になる。777の方は金属なのでプラスチックほどグリップがよくない。強く差し込むとボディに傷が付きそうで、怖々にキャップを入れると安定せずにくるくると回って取れてしまう。エイヤとばかりにぐっと差し込むようになったが、恐れていた傷はつかない。
金メッキなら傷が付きそうなのにと不思議に思っていたのだが、その疑問はある時解けた。中央に刻印されている12K.G.Fの表す意味は、12金ゴールドフィルド、即ち地金にかなり分厚く金を圧着したものだったのだ。道理で擦り傷などが着かないのだと納得した愚か者だ。もちろん、傷が全く付かない訳ではないのだろうが、私の愚かさと臆病な扱いが功を奏して今でもピカピカのままでいる。
機構はカートリッジ式なので、インクは気に入っているシェーファーの緑がかったブルーブラックを入れている。ボトルのブルーブラックとは違う色味を楽しみながら、日記を書くのに使っている。
ペン先のイリジウムがぽってりとついているので、どの角度で書いても確りかつ滑らかにインクを紙に送ってくれる。
■ ペン先 : 14金 インレイド・ニブ
■ サイズ : F
■ 機構 : 両用式 (中押し式コンバーター内蔵)
■ 材質 : 純銀(925スターリングシルバー) / ゴールドプレート
■ 長さ : 133mm / 約148mm(筆記時)
■ 太さ : 12mm
■ 重さ : 24g
Lady Sheaffer 632
- 「女性用」に作られた万年筆 -
1970年に発売されたこの万年筆は、女性用に作られたものだ。ボディの柄もたくさんある。女性のために作られたので、装飾性や可愛らしさがかなり意識されている。あまり派手ではないアルミのボディでも、真ん中のリングに凝った装飾が施されている。

1970年代といえば、アメリカで始まったウーマンリブ運動がピークを迎えた時期だ。アメリカのシェーファー社がそれに押されてか、あるいは賛同して作ったのか、知る由もない。しかし、このレディシェーファーは、現在では万年筆を趣味にしている人の間で人気が高い。
私がこの万年筆を手に入れたのは数年前だが、量産されて比較的に値の張らないシェーファーのビンテージ万年筆のはずが結構の出費になった。現在の市場では、他のモデルよりもこのモデルは高値で取引されているようだ。カートリッジも現在のものが使えるので、まだまだ現役だということなのだろう。
- 自宅でメモに使う -
私は、この万年筆を自宅で予定を手帳に書き込むのに使っている。理由の一つは、自宅以外で使うには少し女性らしいセクシーさがあるので格好が気になるという自意識過剰なところにある。もう一つは、格好を気にしないなら、小さな文字を書くのにとても書き心地がとても良いことだ。ペン先は、特殊な「爪形」をしていて小さいが、適度な撓りがあり、例によって反っているので、ガリガリと紙を削る感覚は全くなくすらすらと書ける。もう一つは、私がシェーファーの落ち着いたブルーブラックのカートリッジインクの色が好きだからだ。同じシェーファーのブルーブラックインクでも、他のメーカーの殆どがそうであるように、ボトルインクとカートリッジインクでは色合いが違う。微妙に違うものもあれば、極端に違うメーカーもある。シェーファーはどちらかというと後者の方だ。
- その小ささに意味あり -
シェーファー社は昔はどちらかというと、万年筆全体が小型だった。後に記事にしようと思っているシェーファーインペリアルも人気の高い万年筆だが、ペンの大きさは、このレディーシェーファーとほぼ同じだ。男性が使うには少し小さい。この万年筆に収まるようにカートリッジがあるが、このカートリッジに入るインクの量が他社と変わらないほどたっぷり入っている。だから細字万年筆に使うとなかなか無くならない。小さな万年筆でたっぷり書けるというわけだ。何となく、そのあたりも女性好みでもあるような気がする。
■ ペン先 : 14金 爪形ペン先 文字幅 : EF
■ ボディ/キャップ : ブラスベース
■ サイズ/重さ:長さ : 134mm / 145mm 軸径:11mmφ 重さ:20g
■ 機構 : カートリッジ / コンバーター(中押し式)両用式 / キャップタイプ
Montegrappa Heritage Silver
- ヘリテイジとレミニセンス -
この万年筆の発売時期はわからない。モンテグラッパ社は、銀製品の加工で有名な土地柄から、創設当初全て純銀のハンドメイド万年筆を主流に作っていたらしい。ヘミングウェイが愛用していたことは有名だ。
この万年筆に大きさや形がそっくりなレミニセンスというモデルは1915年に発売され、その復刻版が1990年代まで販売されていた。レミニセンスは、モンテグラッパの特徴とも言えるオクタゴナル(八角形)の形をしている。調べる限り、レミニセンスの方がよく売れたようだ。恐らくヘリテイジはレミニセンスより早く販売を止めたと思う。
ヘリテイジとレミニセンスには、鏡面と組紐模様の2種類がある。これも組紐模様が刻まれている方がよく売れたらしい。総合的に推察すると、このヘリテイジの円筒形で鏡面の万年筆はあまり世に出回らなかった。
私は、このポケットサイズの円筒形が気に入っている。見ていて厭きない。模様や形がうるさくない。唯一、クリップの美しい曲線だけが見る目を楽しませてくれる。
- 純銀ボディの万年筆 -
純銀ボディの万年筆は2本目になる。1本目の万年筆が最近行方不明になり、暇があれば家中を探し回っている。20年ほど前に購入したものだが、つい最近まで使っていた。少なくとも、このホームページのある画像には写っているのだが・・・。
このモンテグラッパ・ヘリテイジもそうだが、純銀ボディの万年筆は少し放っておくと、すすけて黒ずんでくる。空気中の硫化水素と反応するからだ。銀製品の宿命とも言える。定期的に磨かなければならない。怠ると真っ黒になる。この点手間がかかる。しかし、磨くとピカピカになるので、この作業も楽しい。
- 用途 -
細字万年筆をよく使うようになってから何本か新しく購入した。使っているうちに、細字にも書き味があり、その違いが最近わかるようになってきた。実用として日常に使って優れているものと、書き味が楽しめるもの、その両方のオールマイティのものなど様々だ。
このヘリテイジは実用として優れている分類に入る。書き味やインクフローは良いが、このペンで手紙を書こうという気にはならない。ちょっとしたメモや予定をたっぷり時間がある時に、ゆっくり書くのにはこの万年筆が最適だ。
【ペン先・機構等】
■ ペン先 : 18金
■ 文字幅 : F
■ ボディ素材 : スターリングシルバー
■ 長さ : 約120㎜ / 160㎜
■ 太さ : 約9mmφ
■ 機構 : カートリッジ/コンバーター両様式
■ キャップ : ネジ式 (筆記時・収納時)