Aurora alpha Nero Uno

    - 名古屋 三光堂 -

 このアウロラ・アルファが日本で発売されたのは、一昨年、2016年の夏のことだ。趣味の文具箱では秋号で紹介されていた。私がこのアウロアの新作を手に入れたのは、その年、即ち2年前の11月5日のことだった。長い間、このホームページで紹介しなかった、否、ホームページ自体を更新しなかったのには、訳がある。その訳は別に記述する。

一つ一つの万年筆にその名と価格が端正な文字で書かれている。その端正な文字をこの目で見に行こうと思い立っての小旅行だった。
三光堂さんでこの万年筆を購った後、これもまた有名な「ペンランド・カフェ」に立ち寄った。

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さて、話を元に戻す。三光堂さんは、ご夫婦で営まれておられる。ご主人はとても親切で、気になった万年筆を出して欲しいとも言っていないのに、ショーケースから取り出し、「試筆は無料ですから、どんどん試してください」とインクをつけてくれる。試筆用の机は立派なもので、万年筆とインクによく合うものを置かれている。(写真)  ここで、ゆったりと試筆させて貰い、ペン先についても色々と話が盛り上がる。「昔は万年筆なんて一月に数本売れるかどうかだったのが、最近は、ブームなのでしょうが、一日に何本か売れることもあるのですよ。もちろん、若い人たちだからそんなに高価な万年筆ではないのですが、万年筆に興味を持っていただけるで嬉しいです」とお話され、その他の四方山話をしながら客を大切にもてなして退屈させない。





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 また、話は戻るが、ペンランド・カフェの店長さんも良い意味でとても良い人だ。気のおけない態度で、しかも丁寧な接客の仕方で私が持って行った万年筆を見て、その内の一本に素直に感動され、「うわー、1960年代のモンブランだぁ」を何度も連呼されて、本当に万年筆が好きなんだなぁと思った。(ペンランド・カフェにはそれ以上のビンテージ万年筆があるにも拘わらず。)
 ご自分が自慢の万年筆を出して、試させていただいた。これはビンテージ物と言えるのか?今はどこに行っても手に入らない国宝級というのは大げさだが、それほど珍しい万年筆だった。とにかく、店内には新しいものはもちろん、そこに行かなければ見られない、触れない万年筆がたくさんある。万年筆愛好家なら一度は行ってみる価値があることを保証できる。 
  (写真はビンテージ万年筆の棚)

    - アウロラ・アルファ -

 アウロラと言えば、アウロラ・クラシック88(オタントット)やオプイティマのシリーズがフラッグシップと言える。しかし、時々、思い切ったデザインの万年筆を発表する。以前に記事にしたアウロラ・アスティルは、それまでにない思い切ったデザインだ。いかにもデザイン(見かけ)に拘りを持つイタリア人らしい。最近では、特別生産品としてトリノ、バーメイル、ヴェネチア、フィレンツェといった都市シリーズやシガロなどのデザインをデビューさせている。しかし、これはどれもオタントットをベースにした、ずんぐりの葉巻型に煌びやかな装飾を施したものだと思う。私が買ったアルファもずんぐりした葉巻型だ。少し違う点は、ペン先のニブ近くの金属がダイアモンドカット(?)されていて、指が滑らないように工夫が施されている程度の違いがあるだけだ。やはり伝統を重んじているのか、生産ラインのコストパフォーマンスのせいか、形が安定している。金属部分の格子カットは欧米人がアルファベットを書くとき、極めてペン先に近い部分を持つので、それを配慮したものと思われる。軸の後方を持つ私には単なる飾りだ。しかし、その飾りが良いアクセントになっている。 この万年筆には、線の太いBニブ(太字)が相応しいと思ってBニブにすることにした。三光堂にはアズーロ(水色)、ロッソ(赤色)とネロ(グレー)三色あるアルファの全てがあって、それぞれのBニブを試させてもらった。一番良かったのが、あいにくロッソのそれだった。これがネロウーノならなぁと呟くと、簡単に気に入ったペン先と軸(バレル)の組み合わせにしてもらえた。 
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ニブは14金で分厚いので、硬い。しかし、その硬さを補うペン先の滑りの良さとインクフローの良さが十分にある。最近(2018年)発売された復刻版のアウロラ・デュオカルトの方が、同じ14金ニブでも柔らかい「デュオカルト」については、いつか記事にする。5万円以上出して買うのだから長所がなければならない。このアルファの最大の長所は書くとときに気を使わないことと、少し重めの適度な重さが筆記を安定させるところだ。ボールペンでも使っているかのように、気軽に書ける。また、アウロラの高級万年筆にはないカートリッジ・コンバーター両用式であることは、インクの入れ替えに手間が省ける。ペンを育てるということをよく耳にする。私もその意識を持って、万年筆を使うことがあるが、このアルファは最初から育っている。育てる必がない。大人になって生まれ来たような万年筆だ。 
 インクはサービスでもらった「名古屋城セピア」という三光堂オリジナルのものを入れている。このインクは書いてから30分から1時間ほど経つと色味が変わる面白いセピアだ。

■ ペン先 : 14金 /  文字幅 : B
■ 機構  : カートリッジ・コンバーバー両用式
■ 長さ  : 137mm(収納時) /  約165mm(筆記時)  軸径最大:約14.5mmφ
■ 素材  : 樹脂(レジン)/クロームプレイトトリミング /  クリップ:ベリリウム合金(クロームプレイト) 
■ 重さ  : 約35g