Waterman CF Chrom Plate Cap

     ウォーターマン -その技術とデザイン-

 ウォーターマンほど数奇な運命を辿った万年筆メーカーはない。
 1883年に世界で初めて毛細管現象を応用した万年筆、「ザ・レギュラー」を誕生させた。
 ルイス・エドソン・ウォーターマンは、ニューヨークで保険外交員として働いていた。ある大きな契約を取り交わす席で、彼は万全を期して新しいペンを取り出したところ、インクが契約書に滴り落ちた。急いで新しい契約書を用意したが、ライバル会社に契約を取られてしまった後だった。
 この苦い経験から、インクの洩れない毛細管現象の万年筆を発明したのである。 1926年に
フランスに拠点を移し、1954年にはアメリカの工場を全てフランスに移している。 1970年に
著名な工業デザイナー、アラン・カレを専属デザイナーとして起用した。
 ウォーターマンの理念は、「優れた技術とデザインを融合させて、持つ人に表現する喜びを提供すること」だ。ウォーターマンの世界初は毛細管現象の応用だけではない。
 インクカートリッジとキャップに付けたクリップもウォーターマンの発明によるものだ。この三つのうちの何れの一つをとっても、そのパテントだけで世界一の万年筆メーカーになれたと思う。しかし、ウォーターマン社は何度も身売りして現在に至っている。

 今では、「フランスの」確固たる万年筆メーカーとしての地位を得ているが、「技術とデザイン」そして、その「理念」が先駆けであったにしても、あまりにも時代が早過ぎたのだ。
 私は、経営よりも技術とデザインと理念を重んじているウォーターマンが好きだ。その不器用なところが愛おしい。きっと、今後も不器用な経営をしながら、私たちを楽しませてくれるに違いない。 Waterman CF

 象嵌タイプの先端デザインも気にいっている。この万年筆全体のデザインから考えて、このペン先の形に拵えたものだと思う。
 刻印は、18K 750 菱形マークの中に VS|WM とある。


     ウォーターマン CF -京都丸善で購入-

 私はこの万年筆を京都の丸善で購入した。京都丸善は今はない。昔、京都の丸善では、不定期に万年筆の展示会やセールを行っていた。随分後に分かったことだが、その展示会では、私の義理の祖父の万年筆も、「松林久吉所蔵(非売品)」として展示されていたらしい。
 私は、日頃から懇意にしてもらっていた店員さん(確か、名前は斉本さんだったと思う)の紹介で、セールの日に出掛けた。ビンテージものの万年筆や、少し型が古くなったものが手頃な価格で販売されていた。
 私は斉本さんに勧められて、このウォーターマンCFを購入した。その時は、試し書きが出来なかったが、万年筆に詳しい斉本さんの「この万年筆はお買い得ですよ」という言葉で購入を決めた。それまでに、モンブランやウォーターマンを何本も購入し、微妙な調整もしてもらっていたので、私の好みを知ってくれていたのだったのだと思う。
 私が購入したのは1980年代の初めで、この万年筆が売り出されたのは1970年代だから、商品としては少し型が古くなったのだろう。確かに、手頃な価格で良い買い物をした。

     -毎日見るスケジュール帳に使う-

 ペン先がEFのこの細字万年筆は、思った以上に使い道が広かった。やや硬めなので、小さな文字の線を思ったとおりに表現してくれる。 硬くても筆圧の強弱で線の太さを変えることができる確実なインクフローの機構なので、英文を筆記体で書く時にも使う。
 最近は、仕事のスケジュールを記入するのに使っている。スケジュールは小さな文字で書くのが良い。大きな文字で書くとスケジュールに圧迫感を感じてしまう。インクの色も大切だ。他の万年筆には、自分で配合したブルーインクを入れているが、ウォーターマンのブルーインクだけは細字にちょうど良い色なので、ウォーターマンブルーのインクをこの万年筆にカートリッジで入れて使っている。

 毎年、ダイゴーのA5サイズのスケジュール帳を購入し、専用カバーを外して、気に入っているアシュフォードのノートカバーに差し替えて使っている。

TEBE〈Treuleben und Bishof〉のペンケース
TEBE〈Treuleben und Bishof〉のペンケース

TEBE〈Treuleben und Bishof〉
  テベのペンケース
 ドイツ・ミュンヘンの熟練した職人が妥協のない目で選んだ皮素材で作ったものだ。
 残念なことに、今は日本で手に入らない。3本の万年筆には、それぞれ違ったインクを入れている。これが、スケジュールのスタイル。

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